ロシアの美術工芸品・ミニアチューラについて
2013-07-18


ロシアの伝統美術工芸品にミニアチューラというものがある。 その多くが油性絵の具で小箱に細密画を描いていた形状をしている。伝統的制作地としてはモスクワ周辺の4つの村に限定されている。パレフ村、ムスチョーラ村、フェドスキノ村、ホールイ村である。
 パレフ、ムスチョーラ、ホールイは宗教画イコンの制作地であったが、革命後の宗教政策でイコンの作成が困難になり、その技術を生かして細密画小箱の製造に傾斜していった。フェドスキノだけは出発点が18世紀末にドイツのニス塗り工芸品技術を導入して最初から細密画小箱を製作し、絵のテーマも宗教画ではなかったので革命後の政府と軋轢はなかった。
 絵の技法もパレフ、ムスチョーラ、ホールイがテンペラ技法なのに対して、フェドスキノは油彩技法と異なる。
 絵のテーマもパレフ、ムスチョーラ、ホールイがロシアの古代伝説・民話に依拠したものが多いのに対して、フェドスキノは世俗的で自由度が高い。
 絵を描く土台になる小箱は本来パピエ・マシェー(пааье-маше)と呼ばれる技法で作られる。言葉の響きからするとフランスからもたらされた技法であろう。研究社の露和辞典を見ると「紙に糊・石膏・チョークなどをまぜて作った張子」と説明されているが、丁寧に作られた箱は軽く丈夫でくるいが出ないそうだ。
 1987年にモスクワで購入したフェドスキノのミニアチューラである。作品の題名は「北の歌」(Северная песня)である。 禺画像]  ロシアの小さな村で娘たちが輪になって踊っている。傍らでは若者たちがバラライカとアコーデオンで伴奏を奏でている。日が傾き、逆光の暗がりが広がる中、娘たちの衣装がきらめく−−−この金箔を巧みに使った技法に強く引かれて購入した。 禺画像]  当時はロシア共和国地場産業省工芸品玩具課の管轄で商品価値を維持するための管理が行われていたので4つの産地に限定されていたミニアチュールも、今では何でもありで模造品も多いらしい。本物は非常に高価である。産地まで出向いて作家から直接購入するのが本物を入手する確実な手段だろう。
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